ある日突然、夫が仕事を辞めると言い出したら

ある日突然、夫が仕事を辞めると言いだしたら、あなたはどんな反応をしますか?


動揺もせずに「いいよ」とニッコリ笑って言えるだろうか?「わたしも働いてるし、何とかなるでしょ!」と胸をポーンと叩いて。

そう言って、いざという時には夫の決意を尊重してあげられるような妻になりたかった。何だかジブリ映画にでも出てきそうな妻。理解のある、懐の深い、頼り甲斐のある、ついでに一定の収入を得られる保証のある妻。

だけど、現実はどうだろう。
わが家の場合は「辞める」ではなくて「1年間の育児休業を取る」だったのに。わたしは大慌てでこう言ったのだ。


「エッ?何で?何で急に?休んだらその間、どうやって生活していくのよっ?」

情けない話。理想の妻像からは遠くかけ離れた、器の小さい妻。我ながら悲しくなる。

でも…家計のこと。これからもう1人子どもも増えるのに、わたしは育休中で無収入の身なのに、家のローンも支払い続けていかなければならないのに、心配じゃない?

不安げな顔のわたしをジッと見ながら、夫は淡々とプレゼンを始めた。

  1. 仮に1年間育休を取ったとして、夫に育児休業給付金が支給されること(つまり、夫が全くの無収入になるわけではない)
  2. 第2子が誕生すると、わたしの育児休業給付金も支給されること(現在は第1子の育休が1年半を超えているため既に支給は終了、無収入の状態)
  3. 家のローンについては、今のところ月々の返済の目処はついている。また万が一、このアテが外れても育休中の1年間位は何とかローンを返済できるだけの蓄えが(余裕はないけど)ある


その上で「でも、これまでのように気軽に外食したり、毎月のように遠出や旅行したり、ポンポンと高い買い物は出来なくなるけどね」とつけ加えた。

ぐ、ぐうの音も出ませんけど。
わかっている。夫には見透かされている。
わたしが目くじらを立てて「ローンガー!貯金ガー!子どもガー!教育費ガー!」と言ったって、本当の心の奥底では「ヤダヤダ!旅行とか行けなくなるのヤダ!お洋服だって買うの我慢したくない!美味しいご飯を食べに言ったり、お洒落なカフェでお茶したりしたい!」と叫んでいることを。

そう、わたしが昔から不相応な贅沢を好きこのんできたことを、夫はこのタイミングで釘を刺したのだ。

「それは、今必要な贅沢なの?」


確かに、美味しいご飯は幸せだ。お洒落なカフェでお茶をするひと時もいいだろう。
でも、子どもが「赤ちゃん」でいる時って本当に一瞬で、でもその一瞬の中には沢山の「はじめて」が詰まっている。しかももう一生戻ってこない、期間限定の尊い時間。

美味しいご飯もお洒落なカフェも逃げないけれど、「赤ちゃん」と過ごすのは子どもが「赤ちゃん」の時しかない。天秤になんてハナからかけられない位、比べものにならない位、大切じゃない?と。

夫の言いたいことは、要約すると(なっていないかもしれないけれど)こんな感じだった。


そうね、そうなのよね。
第一子の時に、わたしは1日24時間365日子どもとベッタリと一緒にいて、その一挙手一投足をこの目に焼き付けて、日々本当に楽しませてもらったし、とにかく全てを見、体験してきた。

でも夫はそうじゃなかった。初めての寝返りも、立っちも、歩き出すのも、仕事をしてたから見られなかったんだよね。

第二子の「はじめて」こそは見たい、2歳を過ぎてどんどん出来る事が増えていく第一子の成長も、もっと目の当たりにしたいという夫の希望を叶えてあげるために、美食も旅行もお洒落も、少しの間我慢してもバチは当たらないのでは?…とそんな気がしてきたのだった。